映画『小林さんちのメイドラゴン さみしがりやの竜』公式サイト

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映画『小林さんちのメイドラゴン さみしがりやの竜』
スタッフトーク付上映第1弾レポート

2025年7月24日(木)、MOVIX京都にてスタッフトーク付上映会が開催され、石原立也監督、キャラクターデザイン・総作画監督の門脇未来さん、美術監督の笠井信吾さん、色彩設計の髙橋奈緖美さんが登壇しました。それぞれがラフ画や設定資料を持ち寄り、制作のウラ話やこだわりなどを明かしました。ここではそんな貴重なお話を紹介していきます。

トール迎撃隊の秘話

まずは石原監督の資料へ。描かれていたのは今作オリジナルのフェリキタス率いる一団のラフ画でした。
石原監督「私はこの一団を“トール迎撃隊”と呼んでいるのですが、このトール迎撃隊は原作に登場しないということもあって門脇さんに考えてもらう際に参考にしてほしいと思い、このラフ画を送りました。フェリキタスのCVが小林幸子さんということもあって原作者のクール教信者先生からもラフ画をいただいたので、そちらも参考にしてもらいました。そうやってできたものを見ながら名前も決めていきましたね」
と打ち明けました。

キャラクターの魅力を引き出す技術

次はキャラクターデザイン・総作画監督の門脇さんの資料へ。そこにはキャラクターの設定や私服姿が描かれていました。
門脇さん「映画を作るにあたって既存のキャラクター設定に加えて、原作最新刊までにキャラクターたちが見せた表情なども追加しました。小林さんやトールなんかはかっこいいシーンがいくつもあったので、彼女たちのかっこよさを最大限引き出すために意識的に等身を変えて身長を高くしたりしました」
石原監督「キャラクターはもちろん原作を参考にしていますが、その原作も10年以上続いていることもあり絵も変化してきていたので最新刊までを取り入れたんです」
とキャラクターたちの変化していく姿を作品に馴染ませながらも、彼女たちが持つ変わらない魅力を引き出す工夫を明かしました。

また私服一つ一つにもこだわりが詰まっているようで
門脇さん「監督から小林さんのかわいさを引き出したいという指示があったので私服ではゆったりめのパンツスタイルにしました。カンナの私服はきっと小林さんが買ってくれているのだろうと仮定して“小林さんが考える今どき”な服装を着せてみました。あくまで“小林さんが考える”ですので本当に“今どき”かどうかは分かりません(笑)」
石原監督「小林さんは口調などで強く思われがちですがどこまでいっても一人の人間なんです。そこにあるドラゴンとはまた違った“人”としての魅力を表現したかったんです。スカートは履かなそうだなと思い、スカートに見える、ゆったりとしたものにしてもらいました」
とキャラクターの背景や裏側まで考えて服装を決めていたと語りました。

そして、そのこだわりはキャラクター一人一人にありました。
門脇さん「才川は普段からいい服を着ていると思ったので上品でかわいらしいものにしました。エルマも普段は変なTシャツですが、今回はトールに呼び出されてカフェに行くという場面だったのでおしゃれなものにしました。ヘアピンが三色団子になっているのですが、これは色を付けてもらう際に色彩設計の髙橋さんが提案してくれたものです。私は普通に金属のアクセサリーをイメージしていたので『天才かな?』と思いました(笑)」
とキャラクターの性格や場面ごとに考えながら、制作スタッフそれぞれのアイデアが重なってできあがったものだと打ち明けました。

世界観の作りこみ

次は美術監督の笠井さんの異世界のラフ画資料へ。TVシリーズよりも圧倒的に異世界の要素が増えた今作。どういった世界観を作るのかかなり練ったそうで
笠井さん「異世界に来ましたっていうのを自然と受け取れるように、新種の植物や空の色などで工夫しました。しかし、やりすぎてしまうとキャラクターの存在感が薄れてしまったり、見ている方が世界観に入りづらくなってしまうとも思いました。自然と目に入ってくる植物を現実世界にありそうなものにしたり、空の色を特徴的にしつつも場面によっては現実世界に寄せるといったことも行いました。そうすることでキャラクターを目立たせたうえで自然と異世界に来ている臨場感を表現できたのではと思います」
石原監督「植物を飛ばしてほしいとお願いしました。今回はススキのようなものが綿毛をとばしているのですが、こうすることによってアニメの平面な空間に奥行きが出るんです。これは一種のテクニックというか技術ですね」
とキャラクターを引き立たせつつ、異世界という未知の世界を表現するうえでの工夫を語りました。

涙の色への気遣い

最後は色彩設計の髙橋さんのカンナが涙するシーンと才川が涙するシーンの資料へ。それぞれを比較しながら違いとそこに込めた思いを語りました。
髙橋さん「カンナが涙するシーンは、今作の中でも感動的なシーンかつ背景やその時の空気感が美しい場面だったので、そういった感動や美しさをより際立たせるために涙の中に様々な色を入れました。逆に才川がカンナを呼び止めるシーンでは涙をベタ塗りにすることで才川がTVシリーズで出してきたカンナへのギャグに近い愛情表現に繋がるものになるようにしました。実際に出来上がったものをみたら予想に反してものすごく感動的なシーンに生まれ変わっていましたが(笑)」
と人が無意識に色から情報を得るからこそ、場面ごとの色使いへのこだわりを明かしました。

最後に

貴重なお話が続く中、惜しまれつつも終幕の時間へ。
髙橋さん「平日の夜、忙しい中で来てくださりありがとうございました。まずはストーリーを楽しんでいただいて、もし余裕があれば今日お話ししたポイントを頭の片隅に入れながら見ていただけたら幸いです。本当にありがとうございました」
笠井さん「キャラクターの心情であったり、場面の雰囲気といったものも表現できるようにと背景を考えました。ちらっとでもいいのでそういったところにも目を向けてくださると嬉しいです。本日はありがとうございました」
門脇さん「私のお気に入りポイントとしては最後のトールの上目遣いと一瞬登場する会社モードの滝谷くんです。ここ2人は最高にかわいく、最高にかっこよく描けたと思うのでぜひ注目して見てください。ありがとうございました」
石原監督「今日お話ししたようにたくさんの人がそれぞれのこだわりを持って、力を合わせることで一つの作品ができています。そうやってできあがった作品を皆さんにお届けすることができて本当に嬉しく思います。本日はありがとうございました」

そして、終了後にはスタッフトーク付上映会第二弾も決定!
ストーリーはもちろんのこと制作スタッフのこだわりに目を向けてみるとまた違ったものが見えてくるかもしれません。ぜひ劇場で確かめてみてください!

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