映画『小林さんちのメイドラゴン さみしがりやの竜』
音楽座談会付上映会レポート
2025年7月31日(木)、新宿ピカデリーにて音楽座談会付上映会が開催され、オープニング主題歌を担当したfhánaの佐藤純一さん、towanaさん、kevin mitsunagaさん、音楽を担当した伊藤真澄さん、挿入歌の作詞・歌唱を担当したコトリンゴさんが登壇しました。TVシリーズに引き続き、今作でも本編を彩る音楽を作ってくださった方々がTVシリーズと今作の違いや、見どころを音楽制作や楽曲収録の観点から語りました。

オープニング主題歌「涙のパレード」
まずはTVシリーズに引き続きオープニングを担当したfhánaの皆さん。「涙のパレード」にはこれまでのオープニングを担当してきたからこそのこだわりと『メイドラゴン』への思いが込められていました。
佐藤さん「監督からは『メイドラゴン』なので楽しい楽曲をお願いしますと言われました。その言葉を大事にしつつ、とはいえTVシリーズよりもシリアスな面だったりバトルシーンだったりが多かったので、“楽しい”と“シリアス”のバランスを意識しました。それが曲名にも表れているんじゃないかなと思います。“涙”はカンナの涙から。そこにメイドラゴンらしい楽しさを出す“パレード”を合わせました。歌詞の面でも、今まではドラゴンと人間の異種族の日常というような大きな括りで考えていましたが、今回はカンナのパーソナルな部分に近づいて考えてみようと(作詞を担当した)林さんと話しました」
towanaさん「リーダー(佐藤さん)も言っていましたが、やはり本筋はカンナのお話だと思うので楽曲にもカンナやカンナを思う小林さんの気持ちを汲んで歌えたらと思いました。そして『メイドラゴン』の曲といったらなんといっても歌い出しですよね。『chu chu yeah !』だったり『sing along パッパラッパッパー』だったり。今回は『トゥルルトゥットゥル』なんだっていうのが皆さんもそうだと思いますが私自身も印象に残りました。映画本編を見た時は、そういった新しい曲と共に新しい『メイドラゴン』が見られるんだという気持ちでいっぱいで本当に嬉しかったです」
kevinさん「僕自身が、生音ではない、電子的な音で楽曲を色づける役割なのですが、デモ音源に今までの『メイドラゴン』の楽曲で使ってきた楽器を入れました。これまで『青空のラプソディ』や『愛のシュプリーム!』で鳴らしてきた音を意図的に入れることで本編同様にこの3曲にも繋がりを持たせることができたのではと感じています」
と各々の役割の中で、これまでの繋がりを意識しつつも今作らしさを出すためのこだわりを明かしました。
そしてやはりfhánaの曲と言えば見どころはそのダンス。その中でもやはり注目したいのは佐藤さんのダンスのようです。
kevinさん「踊れないことに味を占めていますよね」
佐藤さん「ちゃんと練習しているのですが、できないものはできないんですよね」
towanaさん「人には得意不得意があるからね」
と微笑ましい会話が繰り広げられました。
音楽・伊藤真澄が語る“フィルムスコアリング”の難しさ
続いて音楽・伊藤さんのお話へ。音楽を作るうえでTVシリーズと今作の明確な違いは“フィルムスコアリングかどうか”だと伊藤さんは言います。楽しい場面、悲しい場面などまとまったシーンごとに音楽を作り、それを音響監督が場面ごとに選択していくTVシリーズと異なり、“フィルムスコアリング”とは映像に対して後から音楽をつけていく方法で、そこにはTVシリーズとは違った難しさがありました。
伊藤さん「バトルシーンのすぐ後に回想シーンが入ったりするとテンポがガラッと変わるんです。バトルシーンは緊迫感を煽るために速いテンポにしていく。その中で回想が入るとゆっくりなものになる。そこを映像に合わせつつ、自然な流れで世界観を表現できるような音楽を考えなければいけないんです。曲の長さもかなりシビアです。ここから始まって、ここまでに終わらせないともう次のシーンに入ってしまうから。でも長く(この仕事を)やっていると自然と手が止まるんですよ。この曲はここまでだって。そうなってくるともう楽しいばかりです。今回は時間的には余裕をもって作らせていただけたのもあると思います。最初に絵コンテをいただいて、その次に出来上がった映像をいただいてという流れで約2か月ほどだったと思います」
と劇中に登場する25曲すべてを“フィルムスコアリング”で手掛けた中での難しさや楽しさを語りました。
実際に作っていく中で監督からの要望もいくつかあったそうです。
伊藤さん「『僕はアーザードを見るとベートーヴェンが頭に浮かぶんだよ』とおっしゃっていたので、アーザードがボロボロになっているシーンなんかにさりげなく(ベートーヴェンンを)入れさせていただいています。それと女性コーラスで神秘的な雰囲気を作りたいとも言われたので女性の声を増やしました。ファフニールがトールに叱咤激励するシーンや、小林さんがキムンカムイを倒すシーンなんかは特に多く入れました。そしてなんといっても挿入歌ですよね」
と監督の要望に応えながら映像に合う音楽を手掛けていったことを明かしつつ、話題はそのまま伊藤さんとコトリンゴさんが手がけた挿入歌「ねがいごと」へ。
感動を加速させる挿入歌「ねがいごと」
コトリンゴさん「『ねがいごと』は真澄さんが作られた楽曲に、私が歌詞をのせる形で制作しました。作詞するにあたって、この話のメインキャラクターでもあるカンナちゃんの気持ちになるのが大切だと思って書きました。私はカンナちゃんがとても好きなので私が歌っていいのかなと思う気持ちもあったのですが、それでも心を込めて歌わせていただきました」
fhánaのkevinさんも涙したという挿入歌のシーン。感動を際立たせるコトリンゴさんの歌声にはカンナの気持ちが確かに表現され、コトリンゴさん自身がこの楽曲を歌う際に「泣いてしまうのでは」と思わせるほどでした。それに対し
コトリンゴさん「レコーディングの時に泣いてしまうことはなかったです。というのもその時は真澄さんやいろいろな方が見ていたというのもあり、とても緊張していたんです。最初のトーンを決めるまで泣くどころじゃなかったです(笑)。その中でカンナちゃんの気持ちを代弁するように歌うんだけどかわいすぎてはだめだと思い、カンナちゃんがカンナちゃん自身を肯定してあげるような、もっと包み込むような声で歌おうっていうのを意識しました。どうでした……?」
とカンナの背中を押すような気持ちだったと言いながらも少し心配そうにレコーディングに立ち会っていた伊藤さんに感想を聞くコトリンゴさん。これに対し伊藤さんは迷うことなく「ひそかに感動していました」と言います。
これにはコトリンゴさんも「よかった」と胸をなでおろしていました。
最後に
貴重なお話が続く中、終幕の時間へ。
コトリンゴさん「今作は子供から大人まで幅広い世代の方が楽しめる作品だと思います。周りにまだ見ていない方がいたらぜひ誘って何度でも見てください。本日はありがとうございました」
伊藤さん「家族の絆がテーマになった温かい映画となっています。この夏休みにおすすめできる作品ですのでまた見に来てください。本日はありがとうございました」
kevinさん「僕自身何度も足を運んでいるのですが、そのたびに新しい発見がある作品だと思います。本当に皆さんも言っていますが何度でも楽しめますのでぜひこれからも、もちろん本編も、それと一緒に音楽も楽しんでいただけたら嬉しいです。ありがとうございました」
towanaさん「私も3、4回見に行ってるほど大好きな作品です。『メイドラゴン』自体が私たちにとって特別な作品ですし、またこうしてこの作品のための歌を作ることができてとても嬉しいです。これから先も皆さんと一緒に『メイドラゴン』を愛していきたいと思います。ありがとうございました」
佐藤さん「『小林さんちのメイドラゴン』は僕たちfhánaにとっても大事な作品で、この作品から知ってくれた方だったり聞いてくださる方も多くいるので、またこうして曲を作ることができたことがとても嬉しいです。fhána自身もこの『涙のパレード』を引っさげてこれからの夏、さまざまなライブを行っていきます。セトリはまだ公開していませんが、やらないわけないだろう、と。ぜひ作品共々よろしくお願いいたします。本日はありがとうございました」
当会に登壇いただいたfhánaさんは、2025年11月9日(日)に台北で、2026年1月24日(土)に越谷で開催される「小林さんちのメイドラゴン」フィルムコンサートツアーに登壇予定。
また、オープニング主題歌のfhána「涙のパレード」と、エンディング主題歌の小林幸子「僕たちの日々」を収録した主題歌CD、伊藤真澄による本編サウンドトラックは好評販売中です!どちらもジャケットは京都アニメーション描き下ろしイラスト!音楽スタッフの話を受け、もう一度歌詞や音楽を振り返るとまた新たな発見があるかもしれません。映画本編と一緒に音楽もぜひ楽しんでください!
音楽情報

