映画『小林さんちのメイドラゴン さみしがりやの竜』公式サイト

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映画『小林さんちのメイドラゴン さみしがりやの竜』
スタッフトーク付上映会第2弾レポート

2025年8月7日(木)、MOVIX京都にてスタッフトーク付上映会第2弾が開催され、前回に引き続き石原監督、そして今回新たに演出の北之原孝將さん、撮影監督の植田弘貴さん、3D監督の山本倫さんが登壇。それぞれが制作資料を持ち寄り、当時の思いやこだわりを振り返っていきました。ここではそんな貴重なお話を紹介していきます。

作品の設計図:絵コンテ

まずは石原監督の資料へ。それはトールが異世界へ行き、フェリキタス率いる“トール迎撃隊”と相まみえるシーンの絵コンテでした。
石原監督「この時点では僕の頭の中にぼんやりとイメージがあるだけで、何も決まっていないと言ってもいいくらいです。“トール迎撃隊”のデザインも(この段階では)全く決まっていません。描かれているセリフも、誰が声を当てるかが決まるごとに少しずつ調整していきます。そういった設定が決まっていくごとにイメージしている動きは可能なのか、キャラクターの設定に合っているのかなどを考えていきます」
と打ち明けました。

演出:派手で見ごたえのある絵

続いて演出・北之原さんの資料へ。そこには今作で圧倒的に増えたアクションシーンが抜粋されていました。
北之原さん「演出というのは簡単に言えば、監督が考えたものに対してこういった演出ができるのではないかというようなアドバイスをしたり相談にのったりする役割になります。その中で監督自身が本当にアニメ好きというのもあり、きっと爆発だったり、戦ったりをやりたかったのでしょう。やっとという思いが溢れたのか、そういったシーンが原作よりも増えているように感じました(笑)。そのときに、見ている方が飽きてしまわないよう、デザインや色に変化を与えました。そのレパートリーを増やす上で、これから撮影監督の植田さんからもお話があると思いますが、撮影処理をしたときに派手で見ごたえのある絵にしたいというのを含めて仕上げの方々と話しながら進めていきました」
石原監督「北之原も原画としてアクションシーンに参加してくれました。その際に北之原自身も言っていた色の加減もそうですが、アクション上でのキャラクターの動きもかなりこだわっていて、いろいろなアイデアをくれました。トールとキムンカムイが戦っているシーンでは、僕がただ“噛みつく”としか描いてなかった部分が、北之原が『こんなんじゃキムンカムイにダメージを与えられない』と言ってくれて、火を吐く演出を追加したりしています」
と監督のやりたいことを汲み取り、それを作品の中に落とし込みつつさらによくするためにはどうすればよいのかを考えていたことを明かしました。

撮影:馴染ませる+α

続いて撮影監督・植田さんの資料へ。撮影処理前のものと後のものを見比べながら“撮影”の役割を語っていきます。
植田さん「撮影は背景にキャラクターをのせて動かしていく仕事ですが、その際に様々な“効果”を付け加えます。撮影の基本的な考え方として“背景とキャラクターを馴染ませる”というものがありますが、そこにプラスしてより臨場感を出すためにフィルターをかけます。キムンカムイが小林家に訪れた際に衝突するシーンでも、オーラや砂煙を追加しています。その他にもアーザードの聖骸布や、数秒しか映らないドラゴンたちが吐く炎などにもこだわりました。中でも小林さんがキムンカムイを倒す際の龍玉は、最初と最後で色が違います。これは北之原さんにアドバイスをもらい、最後はクライマックスということもあり青色に変えようとなりました。はじめのオレンジ色も、要素を足しながら“小林さんが作り出した”ものにふさわしいデザインになるように試行錯誤しました」
石原監督「僕はこういうことがしたい、こういったことをしてほしいという指示は出すのですが、実際にどういうものなのかはざっくりとしたイメージだけ伝えています。その中で作品性やキャラクター像などいろいろ考えて作ってくれたのでこちらとしてもとても助かりました」

そう言う石原監督の指示はかなり抽象的だったようです。
植田さん「アーザードがイルルに攻撃を受けた際の聖骸布の傷跡のデザインは『ピロピロピロ~みたいな感じで』といった指示内容でした(笑)。すごいざっくりとしていますが、作る側としては、それはそれで自由度が高いので楽しいです」
と抽象的な指示だからこそ、そこに作品やキャラクターについて深く考える余地があり楽しくもあったと語りました。

3D:限界まで挑戦した“雲”

最後は3D監督・山本さんの資料へ。雲の制作過程が描かれていました。
山本さん「本編最初のシーンや特報PVでも雲から始まるというのもあり、そのシーンからメイドラゴンの世界に入れるようにとかなりこだわって作りました。最初だけでなく、フェリキタスと戦うシーンでも臨場感を出すためには雲が不可欠な要素だとも感じていたのでクリエイターとして限界までチャレンジしたと思っています(笑)。はじめはもっと二次元的な雲を考えていましたが、それだとカメラが動いたときに立体感がなくなってしまうと思ったので今のようなリアルに近い、入道雲のようなものになりました」
石原監督「“雲”は今作の中でも一つの重要な要素だったので、とにかくここはこだわりました。とはいっても僕というより北之原の方がこだわっていたように思えるんだけど(笑)」
と監督がテーマの一つと考えていた“雲”に関して限界までよいものになるように挑戦したと語りました。

そしてもう一つこだわった点として異次元ゲートを挙げます
山本さん「異次元ゲートもTVシリーズとは色味が異なっています。監督のイメージ図では虹色だったのですが、発色がよすぎると稚拙なものになってしまうのでバランスを大切にしました」
石原監督「これは僕の好みになってしまいますが、最近のアースカラーのようなぼやっとしたものよりも70年代に流行っていた、虹色のようなカラフルなものが好きなんです。そのイメージをうまくゲートに落とし込んでくれました」
と監督のイメージを反映させつつ、それがうまく作品の中に溶け込めるような工夫をしていたことを明かしました。

最後に

貴重なお話が続く中、惜しまれつつも終了の時間に。
山本さん「本日はご来場いただきありがとうございます。僕の方では3Dを主に紹介させていただきましたが。それ以外にも見どころがたくさん詰まっている作品です。ぜひ皆さんの好きなところを見つけていただけたらと思います」
植田さん「本日は撮影の立場からお話をさせていただきました。本編も楽しみつつそういった面にも目を向けてくださると嬉しいです。まだまだ映画『小林さんちのメイドラゴン さみしがりやの竜』の上映は続きますのでよろしくお願いいたします」
北之原さん「本日は皆さんと会えてとても嬉しく思っています。こうやって制作のこだわりや、感謝を皆さんに直接伝える場というのは大変貴重だと思っています。そういった機会に足を運んでいただきありがとうございました」
石原監督「僕は先日イベントでドイツへ行かせていただきました。これからそちらの方でも上映が始まり、世界中に『小林さんちのメイドラゴン』が伝わっていきますのでこれからもよろしくお願いいたします。本日はありがとうございました」

第1弾に引き続き、制作に切り込んだスタッフトーク第2弾。京都アニメーション公式YouTubeチャンネルにてバトルシーンメイキング映像を公開中!当会でお話した制作過程の変化をぜひ映像で確かめてみてください!
そして、スタッフが細部までこだわり抜いた映画『小林さんちのメイドラゴン さみしがりやの竜』をぜひ劇場の迫力でお楽しみください!

バトルシーンメイキング映像

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